任意後見契約

任意後見契約は、任意後見契約に関する法律によれば、「委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるもの」とされています(同法律第2条第1号)。

たとえば、老いによる判断能力の減退等により判断困難になった状況(いわゆる惚け)などが、「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況」に該当します。

事理を弁識する能力が不十分な状況になる前に、あらかじめ自己の後見人になってくれる信頼できる相手方との間で、「自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約」を結ぶことが必要です(もし、本人の惚けが既に進行していて、契約を締結する能力もないと認められる場合には、任意後見契約を締結することはできず、法定後見の途しかありません。)。

この委任契約(任意後見契約)は、事務を委託する本人と、受託する相手方との間で締結する契約ですが、その内容の重要性にかんがみ、公正証書でしなければならないとされています(前掲法律第3条)。また、公証事務の先例上、この公正証書を作成するに当たっては、事務を委託する本人の意思を、公証人が直接面会して確認すべきものとされています。

そして、契約締結後、本人が事理を弁識する能力が不十分な状況に陥った場合、事務の委託を受けた相手方(法律上、この段階では「任意後見受任者」といい、後に任意後見監督人が選任された以降は「任意後見人」という立場になります。)が家庭裁判所に所定の申立てを行い、任意後見監督人が選任されることによって、任意後見が開始することになるのです。

任意後見契約公正証書の作成をご希望の場合には、本人の氏名、生年月日、住所及び本籍、並びに任意後見受任者の氏名、生年月日及び住所を明らかにする資料等(戸籍謄本、印鑑登録証明書及び実印等)を準備し、あらかじめ電話又は電子メールなどでご相談ください。
ご参考までに、任意後見の制度に関して解説した法務省民事局のホームページを紹介します。